講座
日本腦炎の診断と治療
長岐 佐武郎
1
,
石井 慶蔵
1
1東京都荏原病院
pp.32-39
発行日 1956年8月10日
Published Date 1956/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201245
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日本脳炎は本邦にかなり古くより存在していたことは文献等より推測されるところであるが,特に世人の注目を惹きだしたのは戦後であろう.ウイルス性疾患であるために研究が比較的遅れていたこともその理由の一つであろう.その病原体は米国のセントルイス脳炎に2年遅れて昭和10年の大流行の際に同一の方法でマウスを使つて分離に成功して初めて日本脳炎の研究の礎がきずかれた.その後本邦諸学者の研究によつて本病は種々の方面に於て多くの業績があげられかなり明かとなつた.昭和21年には従来夏季脳炎,流行性脳炎等種々の名称で呼ばれていた本病が日本脳炎と呼ばれることに決定し,法定伝染病と同じ取扱いをされることになつた.
戦後各種抗生物質を中心とする多数の新薬の登場によつて急性伝染性疾患の治療方法は全く一変したが,日本脳炎,急性灰白髄炎等のウイルス性疾患では未だ有効な治療剤がなくその出現が待たれる.しかし如何なる疾患でも治療より予防がより必要であることは勿論で,日本脳炎の如く激烈な経過をとり予後の悪いしかも発病率の低い疾患では特に予防への努力が特に必要であろう.以下感染及び予防の問題を中心に日本脳炎の概略について述べてみたい.
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