特集 慢性疾患—明日の公衆衛生のために
慢性疾患と統計
小沢 龍
1
1厚生省統計部
pp.158-164
発行日 1956年5月10日
Published Date 1956/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201199
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疾病統計の現状
慢性,急性に拘らず,貴重な疾病統計が多数の研究者によつて数多く作られてきたが,多くは個々の病院あるいは小地域のもので,かつ特定の疾病に限られているため,わが国における各種疾病の全汎的な動向を判断する資料として不十分である.その中でも,東北大学の附属病院(昭和26・27年)と全国立病院(昭和28年)が外来・入院の全患者について行つた統計観察は,極めて大がかりな点で劃期的であり,利用価値も大きく,敬服に堪えない.農協の病院でも試みられているそうであるが,この種の統計が常時作られれば,わが国の保健対策上極めて有益であろう.一昨年厚生科学研究費による癌調査が,主として東北大学の瀬木教授の手によつてまとめられた.癌の現状を調査したものとしては最新にして最大のものである.
厚生省の作る疾病統計としては,現在のところ6種類をあげることができよう.第1は法定伝染病の如く,行政官庁に届出ることを法律上義務づけられている疾病の統計で,疾病の種類は28種あるが,本号に取上げられた疾病としては,フイラリア・トラコーマ・小児麻痺があるに過ぎない.
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