特集 慢性疾患—明日の公衆衛生のために
癌
田崎 勇三
1
1癌研究会附属病院
pp.52-56
発行日 1956年5月10日
Published Date 1956/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201172
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緒言
近年になつて世界の文化国家では癌死亡率が著しく増加の傾向があり,ドイツ,ノルウェイ,アイスランドでは第1位を占め,米英仏などでは第2位を占めています.日本でも大正4年(1915)から昭和5年(1930)までの15年間には,癌死亡順位は第10位か第9位でありましたが,20年後の昭和25年には第4位となり昭和27(1952)年には第2位となり,以来引続き第2位を占めています.従来日本人に多いといわれた結核は第4位に転落してきました.このような事実は,勿論癌自体のふえた事にもよりますが,それ以外に,かつて死亡順位の上位を占めていた結核,肺炎,下痢腸炎などが,ズルフオン剤,抗生物質や結核特効薬などの出現によつて死亡するものが少くなり,また医学の進歩に伴う診断法の進歩,寿命の延長(癌にかかり易い年令迄生きる),癌知識の普及による受診者の増加,癌原性外因(癌をつくる外部よりの原因となるようなもの)の増加などが挙げられているのであります.このように年々増加している癌に対して一日も早く癌の死亡順位を引下げるように我々は日夜その撲滅に努力している訳でありますが,それには早期発見ということが絶対な必要条件となつて参ります.
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