特集 公衆衞生からみた癌問題
癌治療の現況
田崎 勇三
1
,
宮島 碩次
1
1癌研究会附属病院内科
pp.10-15
発行日 1953年6月15日
Published Date 1953/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201217
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まえがき
癌は自然治癒がなく,転移も頻繁に起るという点で他の如何なる疾患とも比較にならぬ程惡性である。而も社会的に見ても極めて頻度が高く,アメリカでは死亡率の第二位を占め,我国でも昭和26年度には第三位にあり且つ漸次増加しつつある趨勢なので,その治療には全世界挙げて苦心している所である。従つてその治療法も恐らく他の疾患には比べものにならない程数多く又複雑である。茲に現今行われている治療法を種々な方面を考慮して詳細に述べる事は到底不可能な事なのでその要点又は傾向をのみ簡単に述べる。
癌治療の根本方針は,今も昔の如く早期に発見し転移形成のない中に之を外科的療法によつて完全に切除する事である。併し癌は体中何処にでも出来るし,又手術可能な早期に発見する事は未だ容易でないので,すべての癌が手術の対象となるとは限らない。又手術が完全に行われたと思つても,尚残存細胞の存在を否定出来ない事は,斯る手術例から屡々再発が起つている事実からも明かであろう。此処に放射線療法の大きな役割が現れる。併し放射線療法を第二の手段と考える様な考え方は,その方面の進歩によつて次第に変つて来て,或る場合には手術よりも優位につく事が稀でなくなった。従つて癌治療の上では手術療法と放射線療法が現在最も重要有力な手段として相並んで考えられ,又相互にその欠点を補合つて使用されているというのが現状である。
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