講座
一保健婦として学生に答える
堤 とし子
1
1都内保健所
pp.35-36
発行日 1956年2月10日
Published Date 1956/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201117
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保健婦学校の学生の方々の「保健所の保健婦活動をどうみるか」という感想文を読ませて戴き,真剣に保健婦事業をみつめていらつしやる姿に心を打たれました.さびしいことですが,全く同感だという思いが,嘆息と共に湧き上つて来たのです.地道に仕事を続けている一部を除いて,現在の保健所の実状は,学生さんが指摘された事柄が隘路であると,保健所の一保健婦である私も,そう思います.その渦の中で,どうにも出来ないでいる自分自身を今更乍ら,歯がゆく思い感慨無量でした.大変おこがましいのですが,学生さんより,一足先きに歩みだした者として,感想を述べてみましよう.未熟で心苦しいのですが,反省の機会として筆をとつた次第です.
最初に,保健婦活動は上手く動いていないということが挙げられ,保健婦自身の問題について触れておりますから考えてみたいと思います.保健婦自身の業務に対する認識の不充分なこと,保健婦間の連絡,協力が欠けていること,新制度旧制度の対立等……熱心な保健婦のグループ研究会でも,それらのことが屡々討議されます.「保健婦事業を阻む機構上の問題も沢山あるけれども,保健婦全員で,問題にとり組める所は,まだ恵まれていると思います.私の所は,その前に保健婦自身に,仕事をしようとする意欲がないのです.協力がどうしても出来ないのです」と言う,Aさんの言葉が浮かんで来ました.
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