往復書簡(2)
保健婦学生へ—農村保健婦の立場より
後藤 こと
pp.73-76
発行日 1956年3月10日
Published Date 1956/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201144
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この度は御卒業御目出度う存じます.永い間の学生生活が実を結びいよいよ実社会に巣立ちゆくときがまいりました,希望に輝く貴女の黒い瞳の底には最早や学院生活での大きな夢の一部が何等かの方向に働きつつ計画されているかの様に見えます.勉学とは何時も苦しいものであり,その苦しみに加えて喜びは一層大きいものであります.去る勉学中の課程に於いての農村実習は貴重なる貴女の勉学課程の中でもきつと理論と実際との相違のあるという事を強く感じられたと思われますが,然しこれは世のあらゆる面に於いて多少なりとも含まれてあるものでありましようし,ここに理想と現実のぶつかりがあり,また現実を少しでも理想に近づけようとする努力があつて始めて進歩と向上への喜びとあこがれが生れて来ると云えましよう.保健婦事業が組織的に我が国で取り上げられ全国的に保健婦活動の発足を見たのが昭和12年です.
指折り数えれば発足以来永い年月を経たように思えますが,之が実際に実を結び真価を知られるようになるまでには,恐らく何十年,何百年も必要とするでしよう.この新しい事業の中に働いている私共農村保健婦は常に自分の真の業務に向つて邁進しなければなりません.即ち12の原則に示されてある目標によつて事業の計画を樹立し各関係者とよく相談の上あらゆる地区職場段階を問わず普及実施する.
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