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世界の波
末松 満
pp.76-77
発行日 1955年10月10日
Published Date 1955/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201047
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全国各地の食料品店で「サケの罐詰が安くなりました」とのハリ紙を出したのは8月下旬になつてからのことだが、魚屋でも切身のサケが去年にくらべてグンと安い.東京の魚市場で1貫目600円だつたものが,今では500円をはるかに下廻つている.サケという魚は元来庶民の食料として親しまれ,「塩ザケでお茶漬け」といえば,典型的な簡易生活を示したものなのに,近年は値段が高くて手が出せなかつたのはなぜであろう,すべては敗戦のなせるわざなのである.
サケ,マス,カニを北方の海でとるいわゆる北洋漁業は,明治30年ごろから始まつたものだが,日露戦争の結果ポーツマス条約によつて正式に漁業権を獲得し,日本人漁夫は毎年シベリアやカムチヤツカ半島へ上りこんで魚をとり,同地に工場を建てて罐詰を作つた.これが露領漁業といわれるものである.
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