母子慰安実技講座
楽しく朗かに(2)
粟津 実
1
1児童文化財研究所
pp.45-47
発行日 1955年6月10日
Published Date 1955/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200967
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工作コース
私は外出する場合,学校の講義に出る時でも.鞄の中へ色紙とタバコの空箱と鋏を入れている.糊は娘のクリーム入れに詰めてある.市電や市バスの中で座席がとれると早速に仕事を始める,折紙,切紙,タバコケース細工それらは完成と共に,車内の子供達へプレゼントされるのである.ところが他人に物を上げるのはヨイコトをすることなのだが,さて現実となると,勇気と呼吸をのみこむ必要が生じる,子供によつてはコチラが渡そうとする紙細工に頬をそむけて手を出さない,これでは私の方が引込みがつかなくなる,蚊の涙ほどの慈善? もまたつらいかなと思う日がある.これを思うと保健婦の諸姉は,地盤もあれば顔見知りも多いから失敗は少ないであろう.家庭訪問の際,ポケツトに,鞄の中に,ひそかに紙玩具をしのばせて,子供のために,季節のないサンタの小母さんに,大黒姉サンになつて貰いたいと思う.
6月ともなれば睡魔におそわれる機会も多いことだろうから,理論よりもまず実習で目を大きく見張つて貰うことにする.タバコ細工は立体的なものが多く,材料としては,キヤラメルのケースも利用出来るから便利だと思うのだ.
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