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日本人の癌(2)
栗原 登
1
1東北大学公衆衛生学教室
pp.67-72
発行日 1955年4月10日
Published Date 1955/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200942
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II.癌患者の医療状態
我国の癌患者がどの樣に医療を受けているか,又医療費の支拂い状況はどうかというようなことを調べるために,昭和28年6月より11月までの6カ月間に,全国の大学病院及び癌研究所附属病院,国立東京第一病院に入院した胃癌及び子宮癌患者について医療調査が行われました.胃癌と子宮癌の他にも色々な癌がありますが,前に述べましたように,我国の癌患者のうちで最も多いのが胃癌と子宮癌ですから,この両者の患者について調査すれば,日本人の癌患者の大勢が把握されるわけです.調査されました患者の数は,胃癌855人,子宮癌880人です.
前節と同樣に,この調査は日本人全般の癌患者について広く行われたものではなく,日本でも主な大病院に入院した患者について調べたもので,この結果は限られた意味しか持つていないということに注意して下さい.癌患者にとつては,言わば日本での一流病院であり,而もそこに入院した人であるという条件が入つています.調査の対象となつた患者は,日本の癌愚者のうちでは最も惠まれた治療を受けることのできた人達と言つてもよいでしよう.一般の癌患者の医療状態は,この調査の結果が示すよりは,ずつと惡い状態にあるものと考えなければなりません.
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