講座
紫外線とは
北 博正
1
1東京医科歯科大学衞生学
pp.26-29
発行日 1956年8月15日
Published Date 1956/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910161
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さんさんとふり注ぐ太陽の光をプリズムを通してみると,七つの色に分かれることはよく知られているが,太陽からはこのような可視光線のほかに,波長の長い赤色部の外側即ちもつと長波長の部分に赤外線,また波長の短い菫色部より外側,即ちもつと短い部分に紫外線が輻射されている。この二つの輻射線は何れも眼にみえない部分で,赤外線は熱作用が著明なので,一名,熱線,紫外線は化学作用が著明なので,一名化学線ともいわれている。
太陽から地表に到達する紫外線の最短波長は約2900Å(オングストローム10-8cm)であるが,実際には太陽からはもつと短い波長のものも輻射されている。しかし,地球の表面をおおつている空気層,ことに上層部のオゾンのために2900Åより短い部分は吸収されてしまう。このことは生物にとつて都合のよいことで,このような短波長のものは,生物に対して有害に作用するのである。しかし,この最短波長は時と所によつてちがうもので,空気が塵埃その他の物質で汚染されるにつれて最短波長は長い方に移行し,また紫外線のエネルギー量も減少して来るため,その土地の空気の清浄度を判定する一つの指標として利用できる。
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