扉
バランス感覚
黒岩 敏彦
1
Toshihiko KUROIWA
1
1大阪医科大学脳神経外科
pp.315-316
発行日 2010年4月10日
Published Date 2010/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436101142
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2009年は長期間続いた政権政党が交代するという大きな出来事がありました.海外の新聞でも大きく取り上げられていたのを,ちょうどWFNS出席中にボストンで見ましたが,メディアなどの影響も大きかったのか予想以上に極端な結果でした.与野党が拮抗した緊張感の中で政策を論議し決定していくのが理想ですし国民のためにもベストだと思いますが,選挙前までの与党は見るも無残な結果に終わり,正に雪崩を打った状況でした.これでは新与党が遠慮気兼ねなく無理を押し通し,政権政党が変わっただけで状況は変わらないかもしれないと不安になります.多くの人が一斉に同じ方向を向き,何かあれば過剰に持ち上げ,次の瞬間には徹底的に袋叩きという最近の風潮は,あまり感心できることとは思えません.この原稿を書いている今も,昨日までの世界的ヒーローであったタイガー・ウッズの惨めなまでの報道が続いています.彼の発した過去の名言も今や失笑の的です.もちろん彼に原因があるわけですが,報道のどこまでが真実か私達には知る由もありません.私達が論文を書くときは,データを収集して慎重に検証し,多くの文献にあたり,推敲を重ねて,と随分時間がかかるものですが,メディアは真偽のほどの定かでない内容を次々と報道し,その結果に対して責任を取ったという話はほとんど聞きません.周囲の意見に惑わされず,私達個々人における偏らない情報の取捨選択が重要な時代であり,自分の体験しか信じなければ極端に世界が狭くなりますし,何でも信じてしまえば大変な混乱を来すことになります.
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