世界の波
1954年の序幕……—四国外相会議
末松 滿
pp.52-53
発行日 1954年2月10日
Published Date 1954/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200686
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アナタハン島の情慾図繪を,御苦労さまにも京都のセツトで再現し,映画「アナタハン」を作つたスタンバーグの,かつての名作「モロツコ」の画面の中では,モロツコへ渡るデイトリツヒの倫落の女も,ゲーリー・クーパーの兵士も,片道切符しか買わなかつた.モロツコは人間の捨て場だということは暗示しているのである.ところが現在,往復切符を持たぬお客は一切おことわりという島が大西洋上に浮んでいる.淡路島の10分の1もなく,十和田湖へ投げこんだらちようど湖が埋立てられる程度の小島だが,アナタハンやモロツコとは打つて変つた極樂地.その名をバーミユダ島と呼ぶ.人口3万,イギリス領だが,ロンドンからは2,000マイル,ニユーヨークからだと700マイルで達する.
1653年12月,この島へイギリスのチヤーチル首相,アメリカのアイゼンハウアー大統領,フランスのラニエル首相が落ち合い,いわゆるバーミユダ会談を開いたわけだが,往復切符,通用期4日という僅かの間に,四国外相会議なるものを陽のあたる場所へ持ち出した.これが,1954年初頭の世界の波の波頭といえよう.
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