保健婦の壁
未婚者と既婚者
門脇 昭子
pp.49-50
発行日 1953年11月10日
Published Date 1953/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200634
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保健指導のなかでも,特記すべきものがある.それは,既婚者の保健婦と未婚者の保健婦によつて異なる受胎調節指導であろう.認定講習を受けて,理論と方法を身につけて帰つたものの,そのまま一般の主婦達に指導することは,到底不可能かつ無意味なことであると感じた.何故ならば,それは医学的言葉で話しても都会と違つた田舍の主婦達には通じない.医学語を地方語に改めた,ずーずー辯でしやべらねば,解つてもらえない.それが地元生れの指導者であればなんのことはない.お手のものの地方辯を使えるのだが,他所より,保健婦と云う職を載いて,此の慣れぬ地に現われたのでは,半年そこそこで聞く人に解つてもらえるような話をすると云うことは,重労仂にも等しいものがある.話することは既婚者であろうが未婚者であろうが一向に差支えないわけなのだが,聞く人は始めから,指導者の既婚者であるか,未婚者であるかを確めてから聞いている.未婚者が夫婦生活のことを話しても信用出来るものかと云う潜入感のもとに聞いてるから同意語でも感受性が違つてくると見てよい.(現在未婚者である私の偏見なのかも知れない)5月より集団的に又個人的に指導しているが,前に記したような批難は現今あまり耳に入らなくなつた.と同時に相談に乗つてくれと,保健婦の私を訪う人の数も多くなつた.此処鑛山は町村と異つた点がある.
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