特集 親子
未婚の母—その孤独な背景
阪上 裕子
1
1公衆衛生院衛生行政学部
pp.542-543
発行日 1974年10月15日
Published Date 1974/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204898
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スエーデンでは未婚の母が多く,生れてくる子どものうち3人に1人は未婚の母の子どもであるとのことである.母性保護や育児が社会化され,未婚者も既婚者も同じように利用できるとのことである.いわゆる「未婚の母」コンプレックスも感じられないという.ひとりの女性が母となるために必要な配慮が社会制度として十分に整えられていれば,「母」であることが「既婚」とか「未婚」つまり婚姻制度上の位置づけによって規制されないという訳だろう.
いまの日本ではとてもスエーデンのような工合にはいかない.日本ではまだ未婚の母は社会からの支援と承認を受けることなく,独力のみで母とならざるをえない.その心の中では多くの悲しく淋しい努力がおこなわれており,そのために外見的にはあるいは虚勢とみえ,あるいは反社会的な姿勢とみえ,あるいは経済的文化的水準の低いおろかな女性とみえる.そしてひとびとは未婚の母に対して反感,嫌悪,軽蔑,憐憫などの好ましからざる感情を抱くことが多いようである.
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