特集 結婚と公衆衛生
未婚者と未亡人
諸岡 妙子
1
1東京女子医科大学衛生学教室
pp.579-590
発行日 1972年9月15日
Published Date 1972/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204543
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18世紀半ばの坊様ズュースミルヒの発見した右の真理は,20世紀の終りに近い今なお,大真理であることは間違いない.
試験管ベビーが生まれようとし,精子の凍結保存が成功する今日でも,1人の男は1人の女を,1人の女は1人の男を求あて,互いに結ばれようとする.大戦終結直後のベビー・ブームの赤ん坊たちがぞくぞくと適齢に達して結婚し,1970年1年間に婚姻数は未曽有の100万組を突破した.連日3,000組の天下晴れてのカップルが生まれている勘定である.恋愛の自由や性の解放が謳歌され,親のいうことなど聞こうともしない若者たちなら,相惹かれた同志の結合さえあればよかろうし,もし四六時中一緒にいたければ同棲すればよろしかろう,と思われるのに,男も女も結婚という,墓場につづくといわれる門の中に自らを押し込みたがる.2人の男女が互いの愛を永遠に契り合い,かつ社会の中で,他からの承認をうるために,結婚という制度が必要なのだ.この契約は,夫は妻を,妻は夫を盗まれないための防塁の役も果たす.そこで,愛の証しと承認と,またその安全のため,男も女も結婚したがるのである.
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