講座
ふとること やせること
吉川 春壽
1
1東京大学
pp.6-9
発行日 1953年10月10日
Published Date 1953/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200603
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このあいだ見たScottのScrap Bookに,体重1000ポンドになろうと志して,惜しやあと55ポンドと言うところで,死んでしまつた男の話が出ていた.アメリカのアリゾナ州での話である.ゴールには達しなかつたという945ポンドを換算すると430キロにもなる.アメリカ人の標準体重70キロにくらべてまさに6倍あまりである.私が学生だつたころ,東京の博覧会にドイツ人のテレル夫人というのが出演したことがあつた.どのくらい目方があつたか今は記憶にないが,普通の客車ではまにあわなくて,貨車にのせてはこんだというので大した評判だつた.どうも歐米人には度はずれた肥つちよが出るらしい.そこへゆくと,日本人にはそんなにばかげた肥つちよはいないようで,例の出羽ガ嶽にしても,怪童といわれただけに人並以上に大きくはあつたが,もの凄くふとつていて普通の客車にはのれなかつたというようなことはなかつた.中年をすぎた人,ことに女の人で急に肥り出して脂肪の塊りのようになるのは日本人でも少くないが,こういうのも歐米人のおばあさん達の肥つたのに比べればまだまだ大したことはない.なぜ,歐米人にそんなに肥る人がいるのか,人種的な差によるのか,食物のちがいによるのか,よくわからないが多分その兩方の理由によるのだろう.
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