主張
適応性
pp.5
発行日 1953年10月10日
Published Date 1953/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200602
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人は生れながらにして,適応性の非常にある人と,そうでない人とありますが社会人として,多勢の人の中にはいつて1人前の仕事をしていくためには,この適応性の必要性を痛切に感ずるものです.
大体,日本人は一般に適応性が強いといわれています.都会人が田舍にいけばしばらくの間はまるで異つた生活樣式になじまず苦しむ事でしようが,それも余り長いことではなく,結構いつのまにか眞黒に陽燒けしたり草取りもするようになります.田舍の人が都会に出て,都会人になるのは,これよりも更に早いようで,旧い友達でもびつくりするくらい鮮やかな変りぶりを示します.從つて,外国に居住することも,さ程苦労ではないので,移民も容易なのかもわかりません.もつとも日本人の生活樣式ほど複雜なものは他に類がないかもしれませんので,外国人が日本に生活するのと比較するのは無理なのでしよう.適応性があるということと自主性がないということとは決して同じことではなくむしろ両者は共に存することによつて,眞の価値を発揮するものだと思います.
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