治療のポイント
原発性肝癌の手術適応
菅原 克彦
1
1東大第1外科
pp.1485-1487
発行日 1971年9月10日
Published Date 1971/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203832
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
【肝切除の進歩と問題点】
肝切除の歴史は古く,すでに1888年に行なわれているが,出血,感染などのために手術死が多く,消化器外科領域では膵切除とともにとり残された未開発分野に属していた.1950年になって肝切除を中心とした解剖・生理の研究がさかんになり,安全に肝切除を行なうことが可能であることが示され,肝の悪性腫瘍疾患の外科的治療に希望が持たれるようになった.最近になって新しい診断技術が導入され,腫瘍の質・量,局在の判定,耐術し残存肝が再生肥大しうるかなどについて,かなり正確な情報が得られるようになり,手術手技,術後管理も平行して向上し,わが国でもようやく肝癌に対する肝切除術が普及しようとしている現況である.
しかし,外科で診る肝癌は依然として切除不能な末期肝癌が多く,切除率も11-46%と低く,手術死は4-29%と高いが,切除手技や患者管理が不十分であった時代の症例も入っており,将来はさらに切除の成績は向上すると考えられ,肝癌を根治不能の疾患ときめつける時代からは脱却したといえよう.
Copyright © 1971, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.