講座
家族感染の防ぎ方
島村 喜久治
1
1国立療養所清瀬病院
pp.19-22
発行日 1953年2月10日
Published Date 1953/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200453
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はしがき
昔,南方の土人が日本に来て,電話と水道をみて感心し,スイッチと蛇口を買つて帰つたという話がある.誰でも,この話をきくと笑うけれど,大学病院や研究所で,ストレプトマイシンだのイソニコチン酸ヒドラジッドだの,肺切除だの全身麻醉だのと,アメリカ仕込みのスイッチや蛇口をひねくりまわしている一方で,結核患者が狹い家の中で,家族や乳兒に感染させ,しかも入院できないで死んでいる事実を,おかしく思わない人が多すぎるようだ.蛇口から水が出るのは,もちろん,水源地までつづいた配管があるからである.
歐米での化学療法や外科療法の発達は,きれいな水源地に整備された配管を根にもつた上での発達である.そういう背景をもたない日本では,蛇口をひねるとミミズが出るかもしれない.
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