講座
公衆衞生の見地からの十二指腸虫
小宮 義孝
pp.27-30
発行日 1952年5月10日
Published Date 1952/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200278
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十二指腸虫というのは今では古い名前で,寄生虫学的な立場からは正式にはとれは「鈎虫」と呼ぶことになつている。鈎虫は,その口腔内に鈎のような歯牙があるのが特長でそのために「口に鈎ある」虫というのが俗の学名ともなつており,日本でもそう呼ぶことになつたわけである。英語でもHook Wormと云うが,云うまでもなくHookは鈎,Wormは虫である。
では何故十二指腸虫と呼ぶのかと云うと,この虫を一番はじめにヅビニという人が人間の十二指腸部から発見したので,そのまま十二指腸虫と呼ばれるようになつたのである。しかし本来鈎虫は小腸の上方40糎位のところにもつとも多く寄生しているので,十二指腸部にはむしろ少い。だから十二指腸虫と呼ぶのは本来は適当ではないわけである。が,今でも臨床方面では十二指腸虫と呼んでおり,一般にもそう呼ばれている。そう呼ぶことは差支えないが,それにしても以上の事柄は知つておいて貰いたい。
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