職場報告
慈愛園
杉本 カメノ
1
1慈愛園
pp.49-52
発行日 1951年6月10日
Published Date 1951/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200100
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熊本市の東南,水前寺公園に近く,畫津湖畔の小高い丘に,春は櫻,秋は紅葉と菊に色どられて樹々の間に赤瓦のチラホラする小じんまりとした洋館だての家々の並ぶ社會事業施設がある。これは慈愛園と稱ぶ養護施設で,門をくゞると左に幼稚園自動車道路がぐるつと回つたその周圍に子供のホームが7棟,さらに奥の方に老人ホームの平屋と二階建が見える。こゝに現在115名の兒童と45名の老人が生活を樂しんでいる。慈愛園はいつの間にか32年の歳月を過した。その昔--大正8年4月,日本福音ルーテル教會總會においてネルセン女史パウラス女史などが不幸な孤兒や生活困窮の婦人,身寄のない老人の救濟をうつたえ,社會事業施設の創立について意見を開陳したところ滿場の賛成をえた。そしてネルセン女史を委員長として,パウラス女史を專任擔當者として,熊本市新屋敷町に事務所を置くことゝなつた。そして各委員たちはその居住地において戸別訪問による救濟の方法をとつていたが,大正10年パウラス女史が委員長となつてからは新屋敷町の借家に2,3の孤兒を世話するようになつた。その最初の收容兒は,門司市在住のネルセン女史の世話で熊本に送られてきた。ネルセン女史の隣家に異樣な赤坊の泣聲がするので,けゞんに思い尋ねて行つてみると,赤ん坊が押入の中で泣いていた。
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