講座
生活保護法について
飯原 久彌
1
1厚生省社會局保護課
pp.16-22
発行日 1951年3月10日
Published Date 1951/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200051
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1.社會保障制度における生活保護法
我々が生活保護法について知ろうとする前に是非研究すべきは,近時盛んに人口に膾炙れている社會保障なる言葉である。即ち,民生の安定.社會の福祉に關する事なら,一應は社會保障と結び付け,これとの關連において論じられるべきものなのである。一体,この社會保障なる言葉は,何時からポピユラーとなつたのであろうか。正式に法文上に現われたのは,アメリカにおいて1935年社會保障法が制定された時である。資本主義の發展とともに,その資本主義社會に特有な勞働問題をめぐる社會問題が次第に關心の的とたり,殊に第1次大戰後1930年代に至る不景氣の爲め,失業問頭が漸く國策の重點の1つとなつて來たのであるが,社會保障は,かゝる背景の下に登場した。これと前後して,フランス,スウエーデン,デンマルク,ニユージーランド等の諸國においても,防貧と救貧の對策が,それぞれ,社會保障の實をもつて立策されたのである。所がこの社會保障をもつとポピユーラーなものにしたのは,言う迄もなくイギリスの社會保障である。即ち,1942年ビヴアリツヂ郷を委員長とする社會保障調査が政府の命令の下に,理想的な社會保障体系を立案し,このプログラムを基として1948年から六つの法律が實施されるに至つたことは餘りにも有名である。
さて,我が國においても,社會保障の潮流には無關心たり得なかつた。
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