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はじめに
リハビリテーションの専門職として医療・介護にかかわり仕事をするなかで,多くの読者は,患者の抱える生活問題に直面した経験を,少なからずもっているのではないだろうか.身元不明で所持金がない状態で,医療機関に搬送された人.医療費の支払いができないまま,通院しなくなってしまった人.入院している間の家賃が払えず,戻る家を失い,退院後の方針転換をせざるをえなくなった人.保険外の費用の支払いが困難で,転院の受け入れ先が見つからず入院が長期化している人.患者のもつ経済的な問題が,医療を行い,継続していく際に大きな課題となる場合が少なくない.こうした経済的な問題に対応する法律が「生活保護法」である.
現在,全国で生活保護を受給している人は,国民の約100人に1人の割合となっている.長期的な経済不況の影響で,保護を必要とする人の数は増加の一途をたどっているが,疾病や傷病を理由に生活保護を申請する人の割合は60%を超えており,申請に至る一番の要因となっている.生活保護を受給している世帯の44%が高齢者,41%が傷病障害者を含む世帯である.また,被保護世帯のうち89%が医療扶助の受給者である.疾病や障害は,生活困窮の大きな要因であり,医療と生活保護は密接に結びついていることが,こうしたことからもご理解いただけるであろう.
リハビリテーションの専門職が,患者のQOL(quality of life)を配慮しつつ最善をつくす専門職であるとすれば,「患者の生活の安定」は,最善をつくした成果を持続させる前提となる,重要な要素であると思われる.生活保護法をはじめとした,患者の生活を支える制度やその仕組みを知っておくことは,患者にとってよい状況をもたらすだけでなく,リハビリテーション専門職の実践がよりよく生かされるための一助にもなると考える.
本稿では,生活保護法の理念や,生活保護制度の実施方法の実際,さらに,現在生活保護をめぐり課題となっていることについてご紹介していきたい.
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