寝たきり老人の訪問看護
歩く
島田 妙子
1
1東京白十字病院
pp.864-865
発行日 1976年8月1日
Published Date 1976/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917956
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‘歩く’ことの目的とは……
毎日を忙しくしている私たちは,目の前にある仕事をどのように片付けたらよいだろうかとか,この仕事がすんだら次は……と手順を考えながら働いている.‘働く’という字は‘人が動く’と書く.私たちの忙しさは,人が動くことそのもののようである.私たち看護婦は,毎日病棟の中や病院の中を‘歩く’ことがごく当たり前の動作のように思っているし,人院している患者の中に歩けない人があったとしても,その患者さんは,病気だから……とか,入院しているのだから……と,自分とは別であるかのように考えてしまうのである.疾病の過程からみると‘歩けない’ことは,当たり前のことであるかもしれないが,疾病にかかっている人(患者)の気持ちからすると,‘歩けない’ことは当たり前のことではなく,なぜ自分だけに起こった事件なのか,納得できないでいる場合が多い.
‘歩く’ことは,‘歩けない’人にとって最小限の願望であり,せめても歩けるようになりたいと願っている.
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