連載 めざすは正義の味方 月光仮面 福祉の現場から・6
疑惑
内山 智裕
1
1埼玉県立大学保健医療福祉学部社会福祉学科
pp.867
発行日 2003年9月1日
Published Date 2003/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662100161
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3月の定期試験中,私は入院した。御歳30歳の初体験だ。
2月初旬から私の体力は低下していた。グループホームでの住み込みをしながら2時間かけて大学に通い,空き時間にはほかのアルバイトをした。いくつかのボランティア活動にも顔を出していた。自業自得といえばそれまでなのだが。
39度近い熱とともに,激しい腹痛に見舞われた。ミゾオチから少し下の辺りがえぐられるよう。それも数分おきに。時間は深夜0時を回っている。トイレに駆け込むも痛みは一向に治まらず,思わず電話に手を伸ばし自ら救急車を呼んだ。そこでふと考えた。知的障害がある入居者のなかには外部の音に敏感な人が多い。救急車に大きな音でピーポーピーポーこられては大騒ぎになるかもしれない。だから,救急車を呼ぶ受話器越しに懇願した。「すみません,静かにきてください」。救急車はグループホームに向かう道すがら,サイレンを切ってくれたようだが,救急士の話では本当は無理な話だったらしい。すみません。おかげで誰にも気付かれることなく,グループホームから病院へ運ばれた。
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