天地人
海外旅行
地
pp.1629
発行日 1977年11月10日
Published Date 1977/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207467
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近年,日本人の海外旅行はますます盛んになっているという.最近アムステルダムで開かれた国際学会に出席したついでに,西ヨーロッパを団体で旅行し,往時の留学を思い出し今昔の感にうたれた.米国に留学したのは1960年であったが,それこそ四苦八苦して目的地にたどりついた.当時はまだ日本人の観光旅行は許されておらず,円の力も弱く,飛行機を利用するなどまさに高嶺の花であった.
友人の好意に甘えて日本の貨物船に便乗させてもらい,濃霧の北大平洋を直行して10日がかりでサンフランシスコについた.朝もやの中にゴールデンゲートを通して,墓石の立ちならぶようなビルの林立した町を遠望したときは,敵前上陸でもするような悲壮な決意を抱いたものであった.知人の紹介を頼りに,さらにロスアンゼルス,シカゴを経由してデトロイトについたが,生まれて初めて乗る飛行機,塔乗手続きやら,荷物の心配やら,今でも空港での恐怖のような思い出が残っている.
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