調査報告
訪問指導事業の計画立案に際しての具体的方法の検討―国民健康保険における疾病構造の分析から
日川 幸江
1
,
川崎 裕美
2
,
長原 みどり
3
,
岡田 誠有
3
,
吉村 康明
3
,
坂本 和子
3
,
宮澤 千鶴
3
,
小池 比呂美
3
1呉大学看護学部
2広島大学医学部保健学科
3東広島市役所福祉部国保年金課
pp.144-149
発行日 2003年2月1日
Published Date 2003/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662100006
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■要旨
国民健康保険(以下,国保という)の訪問指導事業計画の立案は,国保加入者の疾病構造全体と医療費状況を基に行うことが重要であると考え,国保実績報告と診療報酬明細書(以下,レセプトという)の集計票を分析した。医療費のかさんでいる被保険者の特性や,医療費が多くかかっている疾病について,件数・点数の面から判断し,訪問指導の対象をしぼるために訪問指導事業で取り組む対象群を探った。
広島県東広島市では,糖尿病は,外来件数・外来医療費合計がともに高かった。糖尿病にかかる1件当たり月平均の外来医療費に加えて,腎不全の約30%が糖尿病性1)であることから,1件当たりの外来医療費が最も高額になる疾患と考えられた。糖尿病の点数と件数の関連では,外来も入院も,件数が増加した後の年齢階層で,1件当たりの医療費が増加する傾向がみられた。また,年齢階層別では,外来治療を要す人が増えた階層の次の階層に,入院治療を要す人が増えていた。
糖尿病により医療費がかさむ状況は,構造的になっていると推察される。この理由として,糖尿病は治療・療養が長期になると予測されること,糖尿病を基盤にして他の疾患へ移行しやすいことが考えられた。予防的観点からも,国保の医療費適正化事業としての訪問指導事業は,糖尿病に対する取り組みが必要であることが数値として示された。
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