ちょっと一言 総婦長のつぶやき
雑草の中に
古旗 征子
1
1町立波田総合病院
pp.929
発行日 1986年8月1日
Published Date 1986/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661923084
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まだ,風の冷たい春先,土手の陽だまりに,囲りの枯草を風よけにして,可愛いいぬふぐりの花を見つける.とても愛らしく,やさしさを体中で表現しているようで,なんとも嬉しくなる.それと同時に,子供のころが懐かしく思い出される.冬の長い信州にやっと春が訪れたと思えるころ,茶色の多い草群の中で真っ先に探せるこの水色の花を,まるで宝物でも見つけたように,ドキドキしながら,大切に周りを枯葉で囲み,幾日か楽しんだことである.決して派手ることなく,清楚で,可隣なやさしい花びらを見ていると,愛らしさと同時に限りなくやさしい気持ちになれる.
“やさしさ”,これが私のモットーである.嘘や上辺だけでなく,本当に素直なやさしい心で人に接することができたら—.現状に甘んじ,なにも感じないでいれば,それまでである.しかし,人は二度とない人生を,自分を大切にして,より豊かに,人間らしく生きたいと願っている.自分を大切にするということは,人との触れあいを大切にし,人間の持てるやさしさを自然に表現することだと思う.それにより,相手も心温まる思いや幸せ,心の豊かさを持つことができるだろうし,そのかかわりが自分の人間性を,より豊かにしてくれるのだと思う.“一期一会”である.
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