特集 性的問題を持つ患者のケア
病者の性の世界から学ぶもの—精神科における実践の中から
犬尾 貞文
1
1いぬお病院
pp.627-638
発行日 1983年6月1日
Published Date 1983/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922970
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はじめに
看護という仕事は人間を対象にしている.理論上は,故障した部分だけに目を向けるのではなく,病気を持った人間として対象を見つめ,その全体にかかわるべきことがいつも叫ばれている.しかし,その叫びが出てくる理由には,現実の看護活動が様々な理由により,それがなかなかできにくいことを示しているようにみえる.
性の問題は,すべての人間にとって重要なものであることはだれでも体験的には意識している.しかし,実際の医療活動場面では,性のテーマは本格的に取り組まれることはあまりない.職務上‘性’そのものが問題として浮かび上がる精神科医療においてさえ,同じ傾向をみせている.その主たる理由のひとつは,性に対する考え方価値観が看護都ひとりひとりの生活史,環境などの変化により,ずいぶん相違点があるし,自分の意見を表現すると,本来は秘密のベールに隠しておきたい自信のない自分の姿が,他人の前に暴露される不安を抱くことにあるのではないだろうか.
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