「精神医学」への手紙
精神病者の突然死
一杉 正仁
1
1東京慈恵会医科大学法医学講座
pp.109
発行日 2002年1月15日
Published Date 2002/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902576
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本誌第43巻第9号掲載の「精神病院入院患者の突然死」1)を興味深く拝読した。筆者は精神病者の突然死の研究を専門とする立場から,多少の補足をさせていただきたい。
わが国では原因不明の突然死は異状死であるため,医師による死体検案が行われて死因が決定される。外表のみからの検索では死因確定が困難なものが多く,法医解剖(あるいは承諾解剖)によって死因が究明されることになる。しかしながら,死因究明のためにこのような解剖が行われているのは一部の地域にすぎず,憂慮すべき現状である。生前の一般臨床検査で著変ないが,剖検で肺動脈血栓塞栓症,心筋の虚血性変化を発見することは多々あり,生前の医療経過や死亡時の状況のみから死因を推定することは困難である2〜5)。筆者らは,剖検にあたっては三大腔(頭腔,胸腔,腹腔)の開検,詳細な病理組織および中毒検査などを日常的に行っている。このような精度の高い検査が死因究明に望まれるところである。
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