特集 性的問題を持つ患者のケア
老人の性的言動とホームケア—訪問看護の中で出会う老人たちの性的言動に思う
島田 妙子
1
1東京白十字病院看護部
pp.640-642
発行日 1983年6月1日
Published Date 1983/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922971
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
異性への関心を抑えきれないAさん
Aさん,80歳,女性.17年前,脳血栓で倒れて以来,在宅で嫁の世話になっている.右片麻痺で構音障害があり,10年前から訪問看護婦が訪れている.いざりながら縁側に出たり,リヤカーに乗って氏神さまへ行ったこともあったが,いまは一日寝ている時間が長くなってきた.
Aさんは30代で夫と死別.男2人女3人の乳児から育ち盛りの子どもたちが残され,子どもを育てながら生活を支えるのに必死に働いた“肝っ玉かあさん”であったそうである.子どもたちが学校をおえて,勤め始めた頃から,Aさんは‘息子に嫁が来たら,私は全部嫁に任せて何もしないからネ’と口ぐせのように言い,息子が嫁をもらうまでは……と働き続けた.そして息子に嫁が来て,かわいい孫が生まれて半年目に,脳血栓で倒れたのである.食事も排泄もすべて嫁さん任せ.ただ時間にはうるさく,定まった時刻に食事の準備ができていないと,時報のサイレンより大声で騒ぐし,おむつ交換も時刻が決まっている.
Copyright © 1983, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.