特集 精神病者と入院・1—精神科諸施設の存在と意味
総合病院の精神科の意味するもの—単科精神病院での体験から
山本 浩子
1
1東京都立墨東病院北2病棟
pp.933-937
発行日 1980年9月1日
Published Date 1980/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922685
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はじめに
私の精神科看護のスタートは,東京都の西部にある国立の療養所であった.そこは,春になると桜が咲き誇り,四季の花々が咲き,緑に囲まれたとても美しいところであった。病気を癒(いや)す人びとにとってはこのうえない環境であった.しかし,勤めてまもなく,そこに入院している患者さんのなかには,私が生まれてそこに就職するまでの20数年を,療養所のなかだけで生きてきた人びとがいることを知ったとき,彼らの20数年の人生を包んできた美しい自然が,何か急に私のなかで色あせて見えたのを覚えている.
自然が美しくても,そこは病院である.病気をなおすための病院に,20数年間もいるとはどういうことなのだろうか.そんなにもこの病気は重く,長く,人びとの生活を社会から根こそぎ奪ってしまうものなのだろうか.
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