くすりの毒性・4
クロロキン—くすりの眼毒性
高橋 日出彦
1
1東京医科大学生理学科
pp.399
発行日 1976年4月1日
Published Date 1976/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922604
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くすりは一般に,投与量を増加すると効果も大になります.しかしある用量以上を与えると,用量に対応して毒性も増大することは避け難いのです.従って,くすりには安全量があって,それ以上を服用すれば危険であるということは,毒性学の基本的概念となっています.それなのに,この初歩的な法則がかなり安易に無視されたために,手ひどい失敗をすることがあります.その原因の1つは,個々のくすりのヒトに対する安全量が必ずしも十分には明らかでないからであります.
クロロキンは,第二次世界大戦中,キニーネの原産地が敵軍に占領されたため,アメリカで合成抗マラリヤ剤の開発が行われた際,1万5000以上の化合物から,キニーネよりも安全なマラリヤ治療薬として選ばれたくすりであります.その後,クロロキンはリウマチス性関節炎等の膠原病の治療剤としても使用されるようになりました.抗膠原病剤として使用する場合は,マラリヤ治療の場合に比べ,用量もはるかに多く,服用期間もぐんと長期になりました.そして眼毒性が発見されたのでした(Hobbsら,1959).
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