最近の判例からみた医療事故・11
クロロキン網膜症と医師の過失
稲垣 喬
1
1大阪法務局訟務部
pp.936-937
発行日 1978年11月1日
Published Date 1978/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206708
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判例
医師が薬剤を投与するに際しては,その副作用に留意し,医療の水準上,最も効果的な方法をその限度で実施することが,その義務として要求されている.本件は,腎炎の治療として,小野薬品製造にかかるキドラ(クロロキンを主成分とする内服薬)を1日6錠宛長期間にわたり服用した患者が,クロロキン網膜症となり,重篤な眼障害を受けた場合について,その投与開始後一定時期において,副作用の予見が可能であるとし,適切な時期に右投与を中止しなかった医師の過失等が肯定された事案である(東京地裁昭53.9.7未登載).製造物責任とも関連するが(小野薬品との間ですでに和解がなされている),本件ではとくに,能書きの記載等を含めた医療水準の認定の仕方が参考となろう.
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