寝たきり老人の訪問看護
老人を‘その気’にさせる働きかけ
島田 妙子
1
1東京白十字病院
pp.420-421
発行日 1976年4月1日
Published Date 1976/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922610
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‘子供は大人の小型ではない’ということは今更強調しなくても,比較的多くの人たちは認識している.子供の成長はめざましいし,無限の可能性を秘めた頼もしさは,子供をとりまく家族にとっては喜びの一つであることが多い.それと比較して老人を考えてみると,老人の多くは世帯主の両親であったり,まだ世帯主そのものである場合が多い.すなわち,客観的には老人であっても,同居している家族からみると,主観的には家族の中での年長者であり,また息子・娘にとっては‘老人’というよりも‘わが親’であり,嫁にとっては‘義父母’あるいは‘舅・姑’というニュアンスの方が強い.そこで自分よりも完成された人として接することが多い.
その年長者である老人が,思いがけない失敗や,ごく当たり前と思われるようなことができなかったりすると,同居している家族は,それが‘老人’であるために失敗したり,できなかったりするという理解をせずに,‘親’が,あるいは‘舅・姑’がこんなこともできない—というように受けとめて大声で叱ったり,子供にするのと同じせっかんをすることがある.しかし子供が大人のミニサイズではないのと同じように,老人は大人の大型ではないのである.子供と大人の境をはっきりさせることが難しいように,大人と老人の境もはっきりしない.年齢だけでは決められないし,社会活動や生理的老化現象や精神構造など,いろいろな条件が重なりあって老人の域に入るのだろう.
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