特集 看護から“ケア”へ—新たなる価値づけ
ケア/ケアリングの意味するもの
木下 幸代
1
1聖路加看護大学大学院博士課程
pp.314-317
発行日 1994年4月1日
Published Date 1994/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904508
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
日常の看護場面において「患者をケアする」ということは「看護する」に等しい語感があり,看護婦の日常的な活動である故に,“ケア”という言葉の持つ意味については十分に考察されてこなかったように思われる.ケアはまた,子供に対する母親のケアに代表されるように他者への配慮や世話を示すごくありふれた言葉であり,さらに最近では福祉の領域でも広く用いられるようになっている.
一方,ケアリング(caring)は,1980年前後からアメリカにおいてLeininger,Watsonなどにより新たに定義されて用いられるようになった言葉である.この用語は今まで看護において,私たちが何気なく使っていた“ケア”あるいは“看護ケア”という言葉とは異なっているのであろうか.J. M. Morseら1)によれば,ケア/ケアリングは,看護の本質であると考えられているが,その概念は十分なコンセンサスが得られておらず,さまざまな用語が混乱して用いられている.大まかに分けると,ケアは名詞として“行為”を表し,ケアリングは動詞として“関心,配慮”などを示すとされるが,厳密に区別されているわけではない.
Copyright © 1994, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.