連載 水引き草の詩(うた)—ある看護教師の闘病記・2
プロの目
藤原 宰江
pp.494-497
発行日 1988年5月1日
Published Date 1988/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921992
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2度目の入院
もう一刻の猶予も許されなかった.11月14日の発病以来,得体の知れない病魔との闘いで,私はすっかり憔悴しきっていたのである.
昭和61年12月4日,その日も寒い朝であった.ガラス窓がじきに曇ってしまうような寒気の中を,外套と毛布にくるまった私を乗せて,車はひたすら旧2号線を川崎医科大学へ向けて走った.シートになじまない体を持て余して頭を回す度に,季節の移り変わりに逆らうすべもなく,寒風に吹き荒らされて色を失った沿線の様子が目に入るのだが,その広漠とした光景は私の変わり果てた体調を象徴しているようで一入哀れであった.
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