連載 在宅看護への道・9
看護婦のジレンマ—看護婦として,ボランティアとして
村松 静子
1
,
守田 美奈子
1
,
松沼 瑠美子
1
,
山田 京子
1
,
仲野 佳代子
1
1在宅看護研究センター
pp.1154-1157
発行日 1987年12月1日
Published Date 1987/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921865
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使命感にせきたてられて
退院後2か月間は看護婦の訪問が毎日欠かさず続けられた.この頃は6人のメンバーで分担していたので,1人が週1,2回訪問するペースである.休日や夜勤の日に訪問することが多く,個人の事情によっても異なるので訪問時間もまちまちである.午前中だと10時頃,午後は2時頃になることが多かったが,夕方,勤務が終わって,駆けつけることもあった.どんなに忙しくても,どんなに疲れていても,訪問を休むわけにはいかないという気持ちが,皆の心の中にあった.光子さんの病状,介護状況や家族の不安感を思うと,気持ちがせきたてられた.光子さんの顔や家族の顔を見ないと落ち着かないという自分たちの不安感もあったと思う.家族が私たちを頼りにしてくれ,光子さんの介護には専門家の目や手が必要であるという自負が1人1人の看護婦を支えたのではないだろうか.メンバーは皆,仕事以外の私的な時間の多くを光子さんの看護に費やした.
「私たち6名のナースにとっても,いろいろなハンディを乗り越えて行なっていることなので,定例会での話し合いの内容を充実させ,この新しい試みを成功させたいと思う」──これは1か月後の看護婦の記録である.在宅看護という未知の分野に飛び込み,看護婦としての興味や喜びを少しずつ見出している頃である.誰もが,それを大事にしたいと思っていた.
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