特集 看護コストを考えよう
基準看護への技術的・経済的アプローチ—患者の側から基準看護体制を見直す
川島 みどり
1
1健和会臨床看護学研究所
pp.339-344
発行日 1987年4月1日
Published Date 1987/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921687
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
内科病棟の8人室である.ここには,脳卒中後片麻痺の患者や,外傷の後遺症のためのリハビリ患者が入院している.Aさんは,両便感覚が失調し,おむつを当てているが,看護婦たちの努力でポータブルトイレでの排泄が試みられ,ほとんど失敗をしない日が続いている.1人の高度の難聴患者を除いて,同室の患者たちは,いろいろ話し合っている.不自由な身体を何とかして動かしたり,時間をかけて移動動作をするなど,それぞれが頑張っているのだが,どうしてもAさんのことが気になってしょうがないらしい.看護婦たちがAさんばかりに手をかけているというのだ.
基準看護というのは,社会保険診療報酬の基準に沿って看護体制が整えられ,個々の患者に対して適切な看護の提供がはかられていると認められる病院に対して,入院費に一定の加算を承認するという制度である,その体制は,病院の全病棟に包括的に行なわれなければならず,個々の患者の病気の重さやケアの必要度とは関係なしに,一律に支払われるものである.そこで,上の病室のような,ケアの不公平を患者が感じて話題にするようなことがあっても不思議はない.
Copyright © 1987, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.