特集 口から食べたい—経口摂取への援助
食への想い,家族の想い—先天性筋ジストロフィーのわが娘を看取って
小高 遵子
pp.657-661
発行日 1986年6月1日
Published Date 1986/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921434
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私の子供 聡子は昨年の8月,14歳で亡くなりました.先天性筋ジストロフィーの末期で,死ぬまでの1年8か月を,飲むことも食べることも全くできずに,鼻腔栄養チューブだけで生きていました.この間の本人の苦しみは言葉に尽くせないほどですが,それを見守りながら,どうすることもできなかった私たちの日々も,本当に辛いものでした.
筋ジストロフィーの最後でしたから身体のすべての力が衰え,呼吸の苦しさに喘ぎながら毎日を暮らしましたが,1日1日を文字通り闘いとっていたような生活の中で心を慰めるものが何もありませんでした.吹き出す汗と高熱のさなかに,うわごとのように‘水,水’と言いましたが,口元にもっていったスプーン1杯の水も飲み込めず,口のわきから,たらたらとこぼしたのでした.あの苦しい毎日の中で,せめてひと口の飲み物,食べ物があったら,どんなによかったでしょう.それは本当に生きる励ましになり,大きな喜びと力になったのに,と思います.
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