特集 口から食べたい—経口摂取への援助
—海外の文献から—脳卒中患者の嚥下訓練—Rehabilitation of Swallowing after Stroke
Henry J. Heimlich
1
,
本誌編集室
1Hemlich Institute, Xavier University
pp.662-666
発行日 1986年6月1日
Published Date 1986/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921435
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脳血管障害により唾液を飲み込むことも食事を摂取することもできなくなっていた7名の患者に,連続的に経口摂取の再教育を行なった.そのうち5名は常食を摂取できるまでに回復し,他の2名も床上生活を送っているため限界はあったが,改善がみられた.嚥下訓練を受けるまで,患者たちには経管栄養が行なわれており,その期間は5か月から3年11か月に及んでいた.吸啜,喉頭の挙上,それらの動作の協調についての訓練を彼らに行なった.この方法を脳卒中患者に用いた報告は,これまで発表されたことがない.経口摂取は氷片に始まり常食へと進んでいく.嚥下の再獲得後,言語機能の改善もみられた.以上の臨床経験は次のことを示唆している.すなわち,嚥下困難は麻痺によって生じるが,再訓練できるはずの咽頭筋を使わずにいることがその状態をさらに長引かせているということである.脳卒中により,たとえ嚥下の連続的な反射が失われたとしても,再教育によってそれを取り戻すことが可能になる.
脳卒中によって生じる麻痺は通例片側性なので,筆者は食事や唾液を飲み込めなくなった脳卒中患者に対して,神経が機能している方の嚥下筋を使うように教育することによって機能回復ができるのではないかと考えた.この嚥下機序の再学習という考え方は,腕の廃用性機能障害に対して行なわれる筋力の再訓練の方法と類似している.
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