ベッドサイドの看護
不定愁訴を訴える患者の自立への援助—交流分析を活用して
足川 恵美子
1
1済生会境港病院
pp.302-307
発行日 1982年3月1日
Published Date 1982/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919498
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はじめに
看護の分野では,器質的な身体面のケアと同時に,心理面の援助の重要性も叫ばれている。当院においては,患者の全人的アプローチのひとつの方法として,交流分析を取り入れている.それによって患者の自我状態の読み取りを行い,看護婦自身の自我のコントロールにより,よい人間関係を作り上げることに努めている.病院への依存性が強く,退院を拒む患者を社会復帰へと導いた例や,薬物への依存性が高い患者とのラポール形成に役立てて,患者を自立へと導いた何例かを体験してきた.
ここに紹介するのは,胸痛,胸内苦悶,肩こり,頭痛,腰痛などの不定愁訴が続くなかで,看護婦の立ち入ることを許さず,心を閉ざしている患者への援助である.看護婦が,患者の知的レベルの高さを認めたうえで,患者自身に交流分析注)の活用を行わせ,積極的な働きかけの看護から見守る看護へと切り換えたことで,患者が,自らの力で精神的に自立した事例である.
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