余白のつぶやき(最終回)
そろそろこのへんで
べっしょ ちえこ
pp.1437
発行日 1981年12月1日
Published Date 1981/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919431
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いつまで、という予定がなくてはじまったことは、たいてい唐突に終わるものです。二年五か月にわたり、貴重な誌面を穢した私のおしゃべりも今号で幕となります。本誌の沿革はよく知りませんが、表紙の隅っこに刷り込んであるケシ粒のような活字によると、昭和二十一年十二月十七日第三種郵便物認可とありますから、創刊いらい実に三十五年の歴史を誇っているわけで、そんな長い歳月のなかでは、私がなにやらぐねぐねと言葉の涎をのたくっていた二年数か月なんて、ほんの束の間にすぎません。
でもその束の間に、伝記を書かせていただいた保良せきさんが亡くなり、続いて日本看護界の象徴的存在だった井上なつゑさんや、女性解放の戦士市川房枝さんが帰らぬ人となりました。カーター、ジスカールデスタンあいついで降板し、大平さんも逝きました。変化の感じ方には、走る車の内と外ほどの遠近法があるようですね。激しく移り変わる窓外の景色にくらべて、眺めている当人の変わりようのなんたる遅々。二年経ってもいぜんとして私は、低く昏く騒々しく、変わったことと言えば、齢の数とシワの深さが増えただけで、今年もやがて暮れてゆきます。
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