特集1 患者にとって‘開放化’とは何か—精神科病棟開放化の意味と課題
上山病院における開放化運動の軌跡—地域住民とのかかわりを中心に
今野 幸生
1
1元上山病院
pp.1226-1230
発行日 1981年11月1日
Published Date 1981/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919386
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1973(昭和48)年10月15日,それまで鍵と鉄格子によって長い間閉ざされていた閉鎖病棟が開放された.もちろん開放するまでにそれなりの準備段階を経たわけであるが,ここで強調したいのは,閉鎖から開放するにあたって患者を選ばなかった,つまり閉鎖のときの患者全員がそのままに開放されたということである.17年間閉ざされていた鉄の扉が開かれたのである.文学的表現をすれば,さしずめ‘開け放たれた鉄扉の間からは明るい陽光が射し込み,暗かった廊下を,病棟を照らした.患者は一瞬戸惑いの表情をうかべる.職員はうなずきながら,あなた方は自由なんだ,さあ,気の向くまま散歩してらっしゃいと呼びかけだとでもなるのだろうが,現実はそんなものではなかった.あっけらかんというか,以前から扉は開いていたという感じであった.
しかし,開放化運動を推進する者たちにとって,閉鎖病棟の開放はまさに苦闘の始まりとなった.
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