特集 患者の参加した死への援助—交流分析を用いての試み
〈事例紹介〉‘ほんとうのことを知りたいんです’—病名告知の会話記録と告知後の変化
間瀬 美知子
1
1国立療養所東京病院
pp.699-707
発行日 1980年7月1日
Published Date 1980/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918995
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I.事例の紹介
交流分析の基礎学習が終わり,事例を通して学ぶこととなったとき,1さんのことが頭に浮かんだ。癌末期患者であったが,本人には知らされておらず,予後への不安に満ちていて‘いつになったら仕事に戻れるのですか’と主治医である私に迫り,また家族にやり場のない怒りをぶつけ,看護婦も近寄りにくく,話しかける言葉に困るような状況であった.
交流分析研究会のための会話記録をとるため,私は,Ⅰさんと奥さんと,約1時間にわたって会話の時を持った。その中で,はからずも病名告知へと発展したのであったが,それに対するⅠさんの心理的変化の鮮やかさ,また研究会への積極的参加,そしてその後の宗教的変化など,1人の人間が,死とまっすぐに対面し,それを克服し,残された者たちにすがすがしい印象を与えつつ死を迎えた経過と,かかわりあった者たちがどう考え,どう対処したかもあわせて以下に述べてみたい。
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