特集 難病へのアプローチ
私の提言
在宅ケアの質的向上とシステム化を
島内 節
1
1国立公衆衛生院衛生看護学部
pp.56-58
発行日 1980年1月1日
Published Date 1980/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918859
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難病患者・家族の生活実態を重視して
私が在宅難病患者への看護に取り組み始めたのは4年前からである.振り返ってみると,私はそれ以前にも病院で数多くの難病患者にかかわっていたのであるが,その時にはそのような患者を今のような概念で難病患者としてみてはいなかった.たまたま運が悪くてかかった病気とか,健康管理ができなくて悪化した例というような見方をしていた.そして入退院を繰り返しながら次第に悪化したり,死を迎えるに際してなされるさまざまな試みも,結局は,それが対症的な対応でしかないことを医師も看護婦も,多くは患者や家族も次第に認めざるをえなくなって,ともに悩み,無力感のうちに祈るしかないような経験をしたこともあった.
昭和51年度から在宅難病患者のケアに東京都の研究班のメンバーとして参加するようになってから,かつて上記のような意味で苦しんでいた患者の何割かが,難病という範ちゅうにはいる人たちであったことに気づいた.しかし,在宅看護にかかわりはじめた初期にはまだ,難病が特殊なそして少数の人たちの問題であるという認識しかもっていなかった.ところがかかわっていくうちに,思っていたより多くの人たちが在宅療養をしていて,入退院を繰り返していること,またいつ自分の問題になるかもしれないという身近な問題としてみるようになった.
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