余白のつぶやき・5
グッバイ
べっしょ ちえこ
pp.1333
発行日 1979年12月1日
Published Date 1979/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918847
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塩月正雄という人が,自分の死亡通知をあらかじめ書いておいて,死後発送させたということで新聞種になった.
この国では,生前に自分の墓を建てることは珍しくないし,生きながら世の中から外へ出る,つまり仏門で言う‘遁世’という手もあるほどだから,自分の死亡通知を自分で書くことぐらい驚くにはあたらない.ただこのお医者さまは,実験のために自分の健康な胃袋を切りとってみたり,医家の堕落を嘆いて,自らの医師免許を返上したりして少しく話題になった人なので,マスコミも取り上げたのだろう.有名人(塩月弥栄子さん)を奥さんにもった男の,最後のスタンドプレイだなどと言うつもりはない.人はみな死ぬ時ぐらい好き勝手をしたらいい,他に迷惑をかけなければ,一世一代の大見得を切るのもいいだろうし,生きざまのまま,いじいじと死ぬのもいいだろう.もともと死に方にイカすもイカさないもないのである.
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