手のひらで知る世界・3
人とのお話
石井 康子
pp.297-299
発行日 1979年3月1日
Published Date 1979/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918631
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最上の手のひら会話
私が人と話をする時は,すべて相手に私の手のひらに字を書いてもらって,それを読んで相手の言うことを理解する.ひらがな,カタカナ,漢字,アルファベット,なんでも使いながらできるだけ早いスピードで書いてもらう,カタカナばっかりだったり,ひらがなばっかりだったりするより,その方が言葉の意味がよく分かるし,私が分からないだろうと1字1字ていねいにゆっくりゆっくり書かれるのはかえって分かりづらい.
初めての人が特にこのやり方をするので,じれったくなり‘早く書いてね’とか‘カタカナばかりじゃジジムサイ,普通の書き方をしてね,新聞みたいに’と注文を出す.慣れてしまえば,スラスラと自然に書き,そうすることがあたかも耳が聴こえる者同士のように自然になり,私としばらく一緒にいて,だれかほかの人と会ったら,いきなりその人の手をとってうっかり字を書いてしまい‘アッ’とばかりに顔見合わせて大笑いするという話が何とよくあったことだろう.
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