障害児を育てて 母親の手記・4
子とともに‘障害を生きる’幸せ
本橋 澄子
pp.968-970
発行日 1978年9月1日
Published Date 1978/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918493
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幸せは自らの生き方のなかに
医療ミスも薬害も本来あってはならないことであり,予防と早期発見,早急な対策の充実が望まれますが,それだけでなく不幸にして被害を受けて,そのために悲惨な人生を歩まなければならなくなった患者や家族に対しての保障も当然のことと思います.ですが,患者やその家族自身が必死になって,そのことと闘わなければならないのはなぜでしょうか?人を責め,人を憎むことは悲しいことです.障害を背負い,その上に人を憎む悲しみまで背負い,その闘いの間に,自分自身の本当の願いを見失ってしまう人たちも大勢いると思います.
闘いの末,ある程度の生活の保障が得られた時,その患者や家族は次に何を考えるでしょう?生活の保障が,患者や家族に気持ちのゆとりを与え,これからの自分のしなければならないことを正しく判断できればよいのですが,自分の幸せは自分自身の中にあることを知ろうとせず,いつもひと(他人)から何かをしてもらうことばかりを追いつづけて,不幸に一生を終える人も多いと思います.それに,胎児性障害児の場合は,親が薬害や医療ミスと闘っているその間にも発育を遅らせ,いちばん大切な性格づくりの時期を失ってしまうようなことにもなります.
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