車椅子訪問記・5
‘お刺身’ルポルタージュ—選ばれた人が入るリハ施設
箙 田鶴子
1
1世界身体障害芸術家協会
pp.937-941
発行日 1977年9月1日
Published Date 1977/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918218
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翌々日,上京3日目,2度目の施設訪問である.前回の訪問でへとへとに疲れ,A氏宅へ帰り着いた時は,まるで黄疸のように顔が蒼黄色く腫れ上がった心地だった.A氏のほうも疲れているらしく,表情に出すまいとするのだが隠しきれない疲労が手足をかなり無理させるらしく,クリスチャンである彼は,運転する前も,こくりと首を傾けて神へ安全を祈る.祈りで願いが守られると信ずる人の,無心さ汚れの無さ.心は分かるのだが,無信心の私にはうつむくしかないさびしさであった.
さて今日の訪問先は,リハビリテーションセンター,一昨日の施設では電動車椅子が見当たらなかったのを残念にも不審にも思ったが,A氏夫人はこの施設のことを多少知っているらしく,出がけに,ここならば有りますよ,けれど……となぜか言葉を濁していた.
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